歯周病治療について
当院の歯周病治療の特徴
歯周病は、歯肉炎と歯周炎に分けられます。
歯肉炎は歯茎だけに病気が進行している状態で、歯周炎は周りの骨などにも病気が拡がってしまっている状態です。
歯周炎になってしまうと骨などが溶けてしまい、元の健康な状態に戻ることはできません。
歯周炎の発症は必ず歯肉炎からスタートします。歯肉炎の状態で治療を行えば健康な状態に戻ることができます。
大切なことは普段の定期検診と歯肉炎の状態での早めのアプローチになります。
歯周病・歯肉炎について
歯周病とは
歯周病とは、歯周病原細菌によって歯茎や歯を支える骨などに炎症が生じる病気です。
大きくは歯茎だけに炎症が起きている歯肉炎と、歯を支える骨が溶けて歯茎も下がっていく歯周炎の2つに分けられます。
歯肉炎の症状
- 歯茎が腫れる
- 歯茎が赤くなる
- 歯茎からの出血
- 歯茎がズキズキ痛む
軽度の場合は出血や痛みなどは少なく、気が付かないことあります。また、妊娠中の女性はホルモンバランスの変化で歯肉炎(妊娠性歯肉炎)を起こす場合もあります。
歯肉炎はブラッシングと歯磨き指導とプロフェッショナルクリーニングにより治療を行います。しっかりと汚れを落とすことができれば歯肉炎は比較的すぐに改善されます。
歯周炎の症状
- 歯周ポケットが深くなる
- 歯茎が腫れる
- 歯茎から出血する
- 口臭
- 歯茎が下がる
- 歯がぐらぐらする
- 歯茎から膿が出てくる
- 噛むと歯が痛む
歯周炎の3つの分類
歯周炎の症状は様々であるため、2017年にアメリカ歯周病学会とヨーロッパ歯周病連盟によって病態生理学的に以下の3つの新しい分類が作られました。
- 壊死性歯周炎
- 全身疾患の一症状としての歯周炎
- 歯周炎
一般的に多くの患者様が問題として抱えているのは上記の中で3番目の歯周炎になります。新分類の中で歯周炎については重症度と複雑度を評価するステージ分類と、進行速度やリスクを評価するグレード分類が作られました。
歯周炎は一人ひとりの様々な要素が関係する複雑な病気であり、正しいアプローチで治療を行なっていく必要があります。
歯周治療は歯周初期治療→確定的歯周外科→メインテナンスの流れとなります。
歯周基本検査
歯茎の状態を検査するための簡易的な検査です。歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)の深さをプローブというものさしで計測します。それぞれの歯の一番深いポケットの深さを代表値として記録します。これに加えて歯茎からの出血部位と歯のぐらつきもチェックします。
歯周病治療の流れ
まずは検査(歯周ポケット検査・レントゲンなど)を行います。
歯肉炎の段階であればブラッシングと歯磨き指導を行なって経過を観察します。歯周炎の段階であればまず歯周初期治療と呼ばれる治療に移ります。
歯周精密検査
基本検査より詳細に歯茎の状態を検査します。歯周ポケットの深さはそれぞれの歯で6箇所記録します。出血とぐらつきも基本検査と同様にチェックします。
これらに加えて排膿(膿や血が出ていないか)と歯の根っこの分かれているところの状態も確認します。
上記のポケット検査に加えて、レントゲンでの骨の吸収具合などを併せて総合的に診断致します。
歯周病の原因とは
歯周病の原因となるのは歯垢(プラーク)です。プラークとは生きた細菌の塊で白くネバネバしています。
多くの細菌は酸素の少ない場所を好むために歯周ポケットの中に潜んでいます。そこで毒素を作り続け歯茎に炎症を生じさせませます。
初期の段階では炎症は歯茎だけに生じるため歯肉炎となります。炎症が進むと周りの組織(結合組織や骨)などを破壊し始めて歯周炎となります。
歯周病のリスクファクター
- 不衛生なお口の環境
- 歯並び
- 不適合の詰め物や被せ物
- 口呼吸
- 喫煙
- 糖尿病
- 妊娠中や思春期の女性
- 歯ぎしり噛み合わせ
歯周病と全身疾患について
歯周病は様々な全身的な病気との関係があると言われています。
- 歯周病と糖尿病
糖尿病は持続する高血糖状態を特徴として歯周病とは古くから双方向の関連性が指摘されています。糖尿病の合併症として感染症があります。
歯周病は口の中の細菌による感染症であり、糖尿病により免疫が低下していると歯周病を発症するリスクとなります。また歯周病によって生じるサイトカイン(血中物質)が血中の糖分の細胞への取り込みを阻害して、血糖値が上昇するため糖尿病を悪化させます。このように歯周病と糖尿病は相互に関連している疾患になります。 - アテローム性動脈硬化
狭心症や心筋梗塞などの血管障害の多くがアテローム性動脈硬化に起因します。アテローム性動脈硬化とは動脈の内側にアテローム性(粥状)のプラークが蓄積している状態です。プラークが蓄積すると血流が悪くなり、剥がれ落ちたプラーク部分を治すために血栓(かさぶた)が形成されます。この血栓が剥がれて血液中を流れると細い血管に詰まり血管障害を引き起こします。
アテローム性動脈硬化の大きな原因は高コレステロール症であるとされています。歯周病と動脈硬化の関連は、歯周病原細菌が血中に侵入して循環します。これらの細菌により血栓を形成する血小板が活性化されて動脈硬化を促進させます。また細菌によってアテローム性動脈硬化の炎症反応を増強します。 - 歯周病と妊娠合併症
妊娠合併症には低体重児出産、早産、成長阻害、妊娠高血圧腎症、流産、死産などがあります。歯周病が胎児や胎盤に影響を与える経路は2つあります。歯周病原細菌が血流に乗って胎児や胎盤に感染を起こす直接経路と、歯周病に対する応答として発生した炎症性物質が血液循環を経て胎児や胎盤での炎症性物質の濃度を上げる間接経路です。これらは妊娠合併症(特に早産)のリスクを増加させる原因になると報告が多くあげられています。重要なことは受胎前、妊娠初期の段階で歯周病に罹患していないもしくは歯周治療が完了していることです。
妊娠中は女性ホルモンの変化により免疫反応、唾液分泌量、血流量などが変化して口の中の細菌は増殖しやすくなります。また、つわりにより歯磨きが難しくなったり間食が増えたりと口の中が酸性に傾きやすく、また清潔を保つことも難しくなります。妊娠中も無理のない範囲で歯科検診をおすすめします。
スケーリングとは
スケーリングとは歯や歯の根っこに付着した歯石(下記写真参考)やプラークを、様々な道具を用いて除去することです。
歯石は硬く、歯医者での器具による清掃でないと除去することはできません。歯周病は細菌による感染症であり、その原因となる細菌(歯石)を除去することで炎症を落ち着かせます。
スケーリングの必要性
歯周病の原因菌が潜んでいるプラークは、膜(バイオフィルム)に守られていて抗菌薬などに耐性を示します。そのため物理的にプラークそのものを除去することが歯周病治療では重要になってきます。プラークは柔らかいので歯ブラシで取ることが可能ですが、溜まったプラークが時間経過で硬くなる=歯石になると、歯ブラシなどのホームケアでは取ることができなくなります。
細菌の住処となる歯石を除去しない限り歯周病は進行します。歯周病は進行すると歯を支える骨が破壊され、歯がぐらぐらになったり、歯茎が化膿したりします。
治療で期待できる効果
歯石とプラークが除去されることにより炎症が抑えられ、歯周ポケットが改善します。
見た目としては歯茎が引き締まった状態になり、歯茎からの出血や排膿もなくなります。
治療の特徴と流れ
まずは歯周組織検査とレントゲンにより歯周病の場所と程度をチェックします。全体的に歯周病がある場合にはスケーリングは1〜2回ほどに分けて行なっていきます。
最初の状態に応じて1ヶ月程度後を目安に再検査を行い再評価します。その間も歯ブラシでの清掃状況をみて、ブラッシング指導も行います。
歯肉の上の歯石除去後に歯肉の下に隠れている歯石を取る場合は、場合によっては麻酔を行い、ルートプレーニング(歯肉の下の歯石除去)を行います。
その後に再度評価を行った上で、残すことが難しい歯の抜歯や外科処置による歯周治療が必要な場合は、歯周外科治療を行うこととなります。
歯周外科治療
歯周外科の目的は、炎症を招く因子や病変を除去と局所環境の改善や抵抗性のある歯周組織の作成となります。
ルートプレーニングで見えない状態の歯茎の下の歯石、感染したセメント質を除去しきれない場合や、メインテナンスをしやすくするために歯周組織の形態を改善するために、局所麻酔下で歯肉を切開して明視下にて確実に歯石や壊死性セメント質の除去・骨や歯肉の形態の修正を行います。
治療で期待できる効果
歯周ポケットの改善により容易にメインテナンスできるようになり、歯周病により繰り返して起きていた排膿、出血、腫れ・歯の動揺の改善が期待できます。
歯周外科治療の流れ
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表面麻酔・局所麻酔
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歯肉の切開
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歯根についた歯石や感染した
セメント質・歯肉の除去・骨の形態修正(必要に応じて歯周組織
再生療法) -
歯肉をもとに戻し、縫合
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後日消毒・抜糸
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再評価(3ヶ月後)
術後は歯肉の形態が術前とは変わるため、状況に合った形の歯ブラシや道具を変更して使用していただきます。